2006年04月16日

試論:BJと父親と、彼の息子

 あした放送予定のアニメに便乗して、ちょっと書いてみます。
 脳内妄想ウザー、という人はスルーしてね。


 原作にBJとその父親が出てくるのは「えらばれたマスク」
 (新装版5巻)と「骨肉」(新装版17巻。連載終了後に描かれた
 作品)の2つだけ。ここでは直接BJが父親と対峙した「えらばれた
 マスク」をメインに考察してみる。

 ブラック・ジャックは短期連載から急遽長期連載に変えられたので
 ストーリーのつじつまが合わないことが多い。BJの両親についても
 別れた時期や理由、父親の職業や名前なども不明のまま。確かなのは
 「BJは父親に複雑な感情を抱いている」ことだけ。

 どこで調べたかBJの家に直電してくる父親。そして自分の後妻を
 「おまえも知っとるだろ、」と発言。この電話以前にも父はBJと
 連絡をとろうとした可能性がある。
 「20年ちかくもおとさたがなかった」と言っているが、BJが
 受け取りを拒否した可能性もあるかも。

 おもむろに父の滞在するホテルへ向かうBJ.父親の顔をみて
 「おとうさん」というコマのまなざしが切ない。
 かつてはBJも父親に家族の情愛を感じていただろう。
 親子3人の平和な暮らし。
 それが崩れていったのはいつからなのか?

 父親はBJの顔の傷についてなぜか何も知らない。
 不発弾爆発事故のことを知らないのは、その当時もう日本の
 間家とは完全に離れてしまっていたからか。
 「爆発事故で傷ついた妻を見捨てて蒸発」
 ではなく、それ以前に夫婦の仲は冷え切っていたと見るのが
 妥当なのでは?
 マカオで仕事と愛人に夢中で日本のことは眼中になかったか、
 爆発事故がマカオでは報道されなかった可能性もある。
 
 (不発弾爆発事故については8巻掲載の「不発弾」によると
 米軍・自衛隊・県・不動産会社の間で責任がウヤムヤになり結局
 県が間親子に医療費を支払う、というカタチで決着がついたという
 被害者にとっては真に納得いかない結末になっている。米軍と
 自衛隊がからんでいてはまともに調査・報道されることはないだ
 ろうなあ・・・たぶん)

 父親はなんとか親子のきずなを修復しようと、BJに「この手術が
 エサで昔のことをわすれてくれっていうんですか?」と痛いところ
 をつかれても恥をしのんでひたすら低姿勢。しかしBJにことごとく
 拒否され、思わず出る表情(132ページ6コマめ)がすごい。
 恥・憎しみ・後悔・嫉妬・情けなさが入り混じった目つき!
 さすがは手塚神です!バックのカケアミも執念こもってます!
 (アシさんも乙です!)

 このあたりのやりとりや、後妻の顔を「世界一の美女にしてくれ」
 と注文など、BJの父親にはなんとも「小物感」が漂うんだよね。
 普通なら元の顔に整形させるでしょが。なんとかして自分の過ちを
 なかったことにしようと汲々としている。
 自分の父親がそんな卑小な人間だったらやるせないことだろう。
 BJがおもわずもらした「フフ…」
 という笑いにはそんな自虐的なひびきがあるように思える。

 そして手術。「今でもお母さんをすこしは愛していますか?」と
 問うBJに父親は正直にNOと答える。
 「わかってくれ、愛情とは残酷なものだよ」

 BJは母の顔を復元して父親のもとから去る。「これから一生、
 あなたはいやでもおかあさんの顔とむかいあってくらすんだ」

 愛情とは残酷なもの、その言葉をそっくり父に返す。(それも目に
 見えるかたちにして)BJの暗い情念を残してマンガは終わる。

 しっかし、BJの父親は元妻の顔をみて「あの女の顔だ!」と
 叫ぶ。あの女よばわりまでするところをみると、間夫妻のあいだ
 にはよほど深いうらみつらみがあったのかも知れない。夫婦の
 あいだのコトは夫婦しかわからないだろう。そのへん、ピノコが
 おくたんのBJじゃ理解できないんじゃないかな?
 父親が脳出血で死んだのもBJが整形した元妻の顔を毎日眺めて
 いるストレスからきたんじゃなかろーか?
 ちょっとBJでもやりすぎな感がします。

 黒男と母の遭遇する「不発弾爆発事故」。これを聞くと横浜市で
 起きた「米軍機墜落事件」を連想するのですが、調べてみたら
 横浜の事件はBJ連載より後の出来事だった。
 それでも米軍の証拠隠しのやり口、政府の後手後手な対策、
 ひとり生き残った母親の死に方といいあまりに理不尽なこと
 ばかりで、これじゃBJの怒りも治まらないのもさもありなんと
 思えてくるのです。

 横浜の墜落事件を忘れないために、モニュメントが建っています。
 もし横浜にくることがあったら、訪ねてみてください。
 
posted by 望二花 at 21:15| Comment(48) | TrackBack(12) | 個別作品考察 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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